Naoko Tosta 土佐 尚子

Profile
アーティスト/工学博士(東京大学)。
MIT Center for Advanced Visual Studiesでのフェローアーティストを経て、京都大学学術情報メディアセンター教授(アート&テクノロジー研究)、シンガポール国立大学客員教授。

感情・意識・物語・民族性といった、人間が歴史の中で行為や文法などの形で蓄えてきた文化をインタラクティブに表現し、心で感じるインターフェース「カルチュラル・コンピューティング」を提唱し、作品制作・研究を行う。
主な作品に、「ニューロベイビー」、「インタラクティブポエム」「インタラクティブ漫才」「インタラクティブシアター:ロメオ&ジュリエット」、「無意識の流れ」、「ZEN Computer」、「i.plot」、「Hitch Haiku」など。
ロレアル賞大賞受賞(1997年)。アルスエレクトロニカインタラクティブアート部門にて受賞(2000年)。 ユネスコ主催デジタル文化遺産コンペで受賞(2004年)。
著書に、『カルチュラル・コンピューティング』(NTT出版)。
作品は、ニューヨーク近代美術館、国立国際美術館、富山近代美術館、名古屋市美術館、高松市美術館でコレクションされている。

土佐尚子オフィシャルサイト
http://www.naokotosa.com/

Exhibition

2012国際アートフェアArt Stage Singapore
2011個展 Cultural Bit for Art of Future ジャパンクリエイティブセンター(シンガポール)
2011文化庁メディア芸術祭京都展
2009ジャズトランぺッター近藤等則とコラボレーションで上賀茂神社で、映像音楽ライブ
2006京都大学博物館2006年春期企画展「コンピューターに感覚を」展 (京都大学総合博物館 2階企画展示室)
2003 - 2004THE ドラえもん展 http://www.tv-asahi.co.jp/event/ad/doraemon/
そごう美術館 (神奈川)、北海道立旭川美術館 (北海道)、松坂屋美術館 (名古屋)、大分市美術館 (大分)、島根県美術館 (島根)
1996「美術家の冒険:多面化する表現と手法展」(大阪・国立国際美術館)
1993A-Life WORLD「人工生命の美学」展 (東京国際美術館・T-BRAIN CLUB)
1992 - 1993 NEW VIDEO JAPAN (海外巡回)
1990土佐尚子 NEW WORKS EXHIBITION (GALLERY 光彩)
1989第4回現代芸術祭-映像の今日 (富山県立近代美術館 企画展示室)
1987Accepted for The 21st Annual New York Film-Video Exposition (Metropolitan Art Museum N.Y. U.S.A.)
1986NEW VIDEO JAPAN 招待出品 (ニューヨーク近代美術館)

Concept

感情・意識・物語・民族性といった、人間が歴史の中で行為や文法などの形で蓄えてきた文化をインタラクティブに表現し、心で感じるインターフェース「カルチュラル・コンピューティング」を提唱し、作品制作・研究を行う。

アートを通じて、国内外の文化の交歓を促すインタラクティビティを意図するART BUD JAPAN.comのコンセプトを、先取りして体現してきたアイコン的作家として当サイトでは、失われつつある伝統的な日本文化を最先端のメディアアートの手法を用いて現在によみがえらせる試みから生まれた作品を紹介する。

ディジタル掛け軸「アジアの魔法シリーズ」

中津良平 (アート&テクノロジー評論家、シンガポール国立大学ディジタルメディア研究所所長)

かつて日本の家屋には、床の間と呼ばれる空間があった。そこは、山水画・日本画などの掛け軸がかけられ、また鑑賞用の置物や草花などが置かれていた。そこはいわば家の物理的にも精神的にも中心にあたる空間であった。人々は、客を迎える場合は床の間の前に座ってもらうことにより客に対する敬意を表現し、また正月・盆などの主要な行事も床の間という空間を背景に行われた。

残念ながら空間的な制限もあり、日本の家々から床の間という伝統が消えつつある。それと共に、掛け軸を鑑賞し、草花や置物を鑑賞するという文化が消えつつあるのではないだろうか。もちろんかってのような床の間という贅沢な空間は、日本の家屋において今後とも存在は困難であろう。
とするならば、床の間の消失と共に私たちが失いつつある精神文化を引き継ぐ物が必要になるのではないだろうか。土佐尚子氏作のディジタル掛け軸を見た時に感じるのは、これこそがまさにかっての床の間とそこに置かれた掛け軸を現在において復活するものではないかという感覚である。

土佐尚子氏はビデオアーティストとしてデビューした後、その活躍範囲をメディアアート、インタラクティブアートへと拡張して来た、いわば時代の最先端のアーティストである。メディアアート、インタラクティブアートはある意味で文化の対極にあるアートとみなされている。その彼女が最近は文化を積極的に取り入れ、文化とメディアアートの融合を図った活動に力を入れているのは興味深い。
これはある意味で、上のような消失しつつある伝統的な日本文化をメディアアートの手法を用いて現在によみがえらせようという試みと理解していいだろう。彼女の制作したディジタル掛け軸はまさにそのような目的のものと考えることができる。
と同時にディジタル掛け軸に表現されているものを見ると、それらは単に日本文化の継承をめざしたものという以上のものが含まれていることに気づく。それらは日本を始め、中国、韓国などで古くから信仰の対象とされて来た四柱の神々(四神)であったり、アジア諸国におけるさまざまな仏像であったり、土偶であったりとする。別のいい方をすると、仏教が大きな影響力を持ち、仏教と言うキーワードでつながりうるアジアの種々の文化の混合と統一を表現したものということもできる。その意味では、それは日本文化を表現するに止まらず、アジア文化を表現したものということができる。

グローバル時代と言われる今日、日本の伝統文化の継承を考えるならば、それとアジア諸国の文化との関係を考慮することは不可欠であろう。土佐尚子氏のディジタル掛け軸は、まさにアジア諸国との関係性も考慮に入れて伝承すべき日本文化とその今後を示唆しているのではないだろうか。
残念ながら掛け軸を掛けるべき床の間は人々の家庭にはないかもしれない。しかしながら、このディジタル掛け軸は小振りでかついかにも現在的な感覚を与えてくれる。床の間でなくても、居間などの壁に絵画を飾る感覚で置いてみると、意外にも現在の日本の家屋にぴったりとマッチしていることに驚かされるのではないだろうか。

これらのディジタル掛け軸は、それを鑑賞する人々に日本文化を単なる過去の遺産と見なすのではなく、現在へとさらには未来へと続くものとして見る感覚を与えてくれるであろう。そしてさらには日本文化を日本に閉じた物として見るのではなく、アジア文化という大きな枠組みの中で見る感覚を与えてくれるであろう。現代的な掛け軸としてぜひ居間などに置いて鑑賞されることをお勧めする。

中津 良平
インタラクティブメディアの研究者、アート&テクノロジー評論家。
1946年生まれ、京都大学にて学士、修士、博士を取得。
NTT研究所において音声処理技術の研究に携わった後、1995年にATR (Advanced Telecommunication Research Institute)に移り、アーティストと工学者の共同研究活動(アート&テクノロジー プロジェクト)を推進。MITメディアラボと並び称される評価を受ける。
2002年に関西学院大学に移ると共に、アート&テクノロジーをビジネス化するための会社を設立。
2008年にはシンガポール国立大学インタテクティブ&ディジタルメディア研究所所長招聘、現在に至る。
2010年コミュニケーションの現状と今後に関する著書を出版(オーム社)。同時にブロガーとしてメディアを中心に社会全般にわたる評論を発信している。